1
全部壊れた。擦り切れそう、ずっと。さびしい。孤独になるのが怖くて毎晩のように酒を飲んでる。
2
もう誰にも嘘をつきたくない。こんな嘘で塗り固めた人生やめてしまいたい。これまで傷口を滅多刺しにして抉り続けてきた。何度も何度も。錆びたナイフで。
3
ずっと気を張っていて、こころがひとときも休まらない。たいして器用でもないのに、笑ってごまかしてばかりで、隠すのも取り繕うのも疲れた。たえず自分を責め続けて、でも何も変わらなくて、ことごとくうまくいかなくて、気が付いたら思考が自己嫌悪/否定/不信に支配されてる。自分なんて信頼に値しない人間だと繰り返し自問自答する。光が見えないほどの暗闇のどん底。自身の存在価値が揺らぎすぎて、わからなくなってしまった。生きてることがどうしようもなくしんどくて、苦しくて。もう自分で自分のことを抑圧するのをやめたい。
4
―――うわもう無理。ふざけんな。
やばい、動悸と変な笑いが止まらない。おかしくなりそう。
それからなんかもう吹っ切れた。勝手にしとけって。
5
卒論を書きはじめたばかりのとき、自分のなかですごくつらい決断をした。決断に至るまでの断片を少しずつ書き連ねてみた。寄せ集めるように、思い出しながらポツポツと。いざ書いてみると書き尽くせいないようなことがたくさんあるね。難しい。
6
―――とにかく何か自分を変えたかった。
たしかにしんどい出来事はあったけど、最初はそんなたいそうな動機じゃなかった。先輩の左耳に空いたピアスを見て、すごくいいなと、かっこいいなと思った。それで自分でも開けたくなった。ただそれだけのこと。
先輩と会った週明け。友達と石井のうどんを食べたあと、近所のウエルシアで自分でピアッサーを買った。1000円くらい。これまでの自分だったらバイトとか言い訳にして、買うことすら結局しなかったと思う。さすがにちょっと不安だったので、次の日の夜に麻雀するついでに友達の家で空けることにした。
―――うわ、ほんとにピアス空けちゃうんだ。
そらめっちゃ緊張したよ!!余裕そうな雰囲気出しておいて、心臓もバクバクだし、空ける場所を何度も何度も鏡で確認した。でもいざ実行するときは一瞬で終わりがちだよね。耳にピアッサーをセットして躊躇せずパチッといった。意外と痛くなかったし、ないよりも青色でキラキラしてるファーストピアスがすごくかわいくて、めっちゃいい。
自分が自分じゃないみたい。はたからみたら「そんなことで」と思うようなことでも、その人にとってみれば全然「そんなこと」じゃないことなんて往々にしてあるからね、
その日は疲れてそのまま友達の家で寝た。
7
あまりにも急だったからみんなに理由を聞かれたけど、おれが空けたいと思ったから、それでいいじゃんね。でも、誰かに合わせてばかりの自分とは少しでも決別したい、そんな意思表示くらいにはなったかもしれない。
8
もう誰かの理想とされてきたようなやさしい自分はいない。そもそもそんなの虚構だった。
9
聞いてて耳に残った歌詞があった。たまたまプレイリストから流れてきたJUDY AND MARY「そばかす」の一節。
おもいきりあけた
左耳のピアスにはねぇ
笑えない エピソード
だいぶピアスホールが安定してきた。膿むこともなくてよかった。そろそろファーストピアスから新しいピアスに替えようかしら。
10
左耳のピアスにまつわるまとまらない話でした。